先日、二丈福吉を訪れました。糸島の西部で、佐賀県の唐津まですぐ近くのところです。天気は曇り気味でしたが、その曇り空がかえって風景に溶け込み、静かな時間を楽しむことができました。

糸島の二丈福吉を巡る旅

静かな海岸は別世界のようでした。

まず、砂浜に到着した瞬間、誰の足跡もないまっさらな砂浜に目を奪われました。そして、潮風に吹かれながら、波が静かに打ち寄せては引いていく様子は、まるで日常から切り離された別世界のよう。この静かな海岸には、小さな感動を覚えました。もし天気が良ければ、もっと鮮明な風景が見られたかもしれませんが、曇り空もまた旅の一部。それも旅の楽しみの一つです。この瞬間の記憶はそのまま大切に残しておこうと思います。

砂浜を少し歩いて福吉漁港の近くに向かうと、港町に溶け込んだ猫たちと出会いました。猫たちは警戒心も見せず、ただ静かに佇んでいて、のんびりとした空気感が漂っています。「港町の主」とでも言うべき彼らの姿は、心に深く残りました。こういった偶然の出会いも、自転車旅ならではの楽しみです。

猫たちとの穏やかな時間を過ごし、喉の渇きを満たすため福吉漁港を後にしました…。

福吉駅で奏でられた親子の物語

筑肥線の風景と親子の美しい別れ。

ところで、このあたりはスーパーやコンビニを見かけない。そこで、渇いたのどを潤すため、私はJR福吉駅にたちよった。ようやく、アクエリアスを手にしコンコースで休憩をすることに… ふと、ホームに目をやるとピンクの大きなスーツケースを手にした若い女の子の姿が目に入った。傍には、父親とおぼしき男性が寄り添っている。どうしたのだろう、俯いて元気がなさそうだ。

ここ筑肥線は1時間に2本程度、単線のローカル線だ。撮り鉄の方々にも人気の路線で、時折珍しい車両が運行されることもあり、鉄道ファンにとってはたまらない場所だ。私は、購入したアクエリアスをゴクゴク飲みながら何故か親子の姿が気になった… 女の子が何か父親に話しかけている。父親は寂しそうな顔で頷くだけだ。彼女は、就職か何かで、福吉の実家を離れていくのだろうか…。

旅立ちの発車ベル

ローカル線の駅のホーム、希望を胸に旅立つ娘、そして見送る父親の寂しそうな姿、ドラマのワンシーンのよう。父親は娘が誕生した時から、旅立つこの瞬間までを回想しているのだろうか…。その時、列車が到着するベルがホームに鳴り響いた。女の子はたちあがり、ホームから遠くを覗き込むように到着する列車を見つめている。父親も立ち上がり、無言で到着する列車を見つめている。その手には娘のスーツケースを持っていた。

だんだんと、列車がホームに近づいてくる… 女の子は、新しい生活に夢を抱いているように見える一方で、あったかい家族との生活から、ひとりでの生活に不安げな表情だ。そして、父親の唇が震えているのが見えた。ゆっくりと列車がホームに入ってくる… 娘は、父親からスーツケースを渡され、しっかり握り父親に何か言っているようだ。そこで、何かの緊張から解きほぐされたように少し笑顔になった。父親も肩を震わせながら娘に何か話している。

父と娘の絆

娘は手を差し出し、父親もほぼ同時に両手を差し出し彼女の手を包んだ。父親は、娘の手を握りしめ、何かを語りかけている。娘も頷き、静かに彼の言葉を聞いている。そこで、列車のドアがゆっくりと閉まり… 列車は次第に見えなくなっていった。見送る父親の姿を見た時、先ほどの寂しそうな顔とは異なり、娘がどこに行っても見守りたいという強い決意を感じた。

駅のホームで、私は見送る父親の姿に自分を重ねていた。 通りすがりに偶然見かけただけの傍観者だが、娘を大切に思う父親の気持ちがなんとなく私にも伝わってきた。大切な人との別れ… それは、誰しもが経験する、普遍的な痛みを伴う出来事かもしれません。別れは、終わりであり、同時に新たな始まりでもあります。あなたは、別れを経験した時、どんな気持ちで未来を見つめましたか…。

糸島市福吉の家族

糸島市の二丈福吉で小さな冒険

様々な発見があった魅力的な旅でした。

砂浜から遠くを見渡すと、唐津の風力発電所がしっかりと見えました。ゆっくりと回る風車が、自然の中で近代技術と見事に調和している光景には、なんとも不思議な感覚を覚えます。唐津は以前から気になっていた場所なので、近いうちに訪れ、あの西側に広がる美しい夕日を見たいと思います。

このように、糸島の二丈エリアは、ちょっとした冒険心をくすぐる魅力的な場所でした。人の手がほとんど加えられていない自然と、猫たちとの偶然の出会い、そして遠くに見える唐津の風車…。こうした小さな発見が、旅の記憶をさらに豊かにしてくれます。

次回、この静かな砂浜がどんな表情を見せてくれるのか、とても楽しみです。

二丈福吉 – カフェ

うみもぐら糸島 

糸島市二丈の海沿いにある隠れ家のようなカフェです。自家焙煎のコーヒーは深みのある味わいが特徴です。ランチには地元の食材を使った手作り料理も楽しめます。そして糸島の海を眺めながら、自家製ケーキとスペシャルコーヒーの組み合わせもおすすめです。